ジョホール州の日本人墓地(2)
前回ご紹介したマレーシア・ジョホール州の日本人墓地にあるいくつかのお墓で、立派で印象的なのは「真如親王の供養塔」です。(真如とは法名で、出家前は高岳親王(たかおかしんのう)という名でした)
高岳親王は平安時代初期の皇族で、799年に平城天皇の息子として生まれました。平城天皇が809年に弟の嵯峨天皇に譲位したとき10歳で皇太子に立てられ次期天皇と目されていましたが、翌810年に薬子の変という政変が起こり、それに伴って皇太子から廃されました。822年に四品という位階を授けられ名誉を回復しましたが、政治の世界にあきあきしていたのか出家して僧となり、真如と名乗りました。のちに弘法大師の10大弟子の一人にもなり、阿闍梨の位を受け、空海の遺骸の埋葬にも立ち会ったのだそうです。
60歳も過ぎた頃、仏教を極めるため唐に渡り長安に入りましたが、当時の唐は仏教が衰退していたためよい師を得られず、広州から海路天竺(インド)を目指すことにしたものの、その後消息を絶ちました。その後、在唐の日本人留学生からは「羅越国で没したそうだ」という報告があったのだそうです。
羅越国というのは、諸説がありますがマレー半島の南端にあった国であるという説が有力なのだそうです。おそらくそれを根拠にしたのでしょう、1970年に高野山親王院中川善教師により、すべての材料を日本から運び込み、専門の日本人石工によって真如親王の供養塔が建立されたのだそうです。墓地の中では一番大きく立派で、高さは270cmもあるのだそうです。
説が正しいとすれば、ひょっとすると真如親王は初めてマレー半島に足を踏み入れた日本人であるかもしれません。それだけに、ジョホールの日本人墓地で一番立派な塔を建立され供養されるのにふさわしいと思われます。
2014年1月28日
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