かろうと石
お墓の中で仏様が眠る場所をカロートといいます。このカロートにまつわる昔話をご紹介します。
むかしむかし、ある村で、日照りがつづき、大勢の村人たちが困ったことがありました。
村人たちは、雨乞いをしたり、山伏にご祈祷をしてもらったりしましたが、日照りは一層ひどくなるばかりでした。
庄屋さんも、毎日朝から村の土地を見て歩きまわられておりました。
ある日、村をひとまわりしてきた庄屋さんは、家木戸の石に腰をおろし「これ以上雨が降らないと困ったことになる。」とこぼしました。
その時、庄屋さんの屋敷に村の若者が飛び込んできました。
そしてこのように言いました。
「庄屋さま。今日、雨乞いの祈願にお寺へ行ってきたのですが、お寺に古い雨乞いの記録があったので借りてきました。」
「なんと。ちょっと見せておくれ。」
庄屋さんは、急いで雨乞いの記録に目を通しました。
「そうか、『かろと石』か。『かろと石』のことを忘れていた。」
庄屋さんは立ち上がって言いました。
「村の者を大至急『かろと石』のまわりへ集めてくれ。神主さんにも出てきてもらうのだ。」
『かろと石』というのは、村の神社にある大きな石のことです。
その昔にも、日照りで困っていたときに、お祈りをして『かろと石』を動かすと雨が降って村が救われたという言い伝えがあったのです、
若者は、すぐに庄屋さんの家を飛び出していきました。
庄屋さんが紋付に着替えて神社に駆けつけると、村の若者たちが、大きな『かろと石』を動かせそうな棒や農具を持って、『かろと石』のまわりに集まっていました。
庄屋さんは「みんな集まってくれてありがとう。今日は、今までにないほどのお祈りをしよう。」
『かろと石』を動かす若者たちは、裸祭りのようないでたちで、雨乞いを待っていました。
神主さんのお祈りが終わると、若者たちは『かろと石』に棒などを差し込み、力を込めました。すると、大きな平たい形をした『かろと石』が、かけ声とともに、少しずつ動き始めました。
そのまわりを囲んでいた年寄りや、女、子供たちも、みんなで掛け声をかけながら、この様子を見守っていました。
「もう一息じゃ。今度こそわしらの願いが通じるぞ。」
庄屋さんがそう言ったそのときです。
今までずっとかんかん照りだった空が、急に暗くなりました。
「見ろ。雲だ。雲が出てきたぞ。」
誰かがそう言うと、みんな空を見上げました。
そして、稲妻がひと光り走ったかと思うと、たちまち大粒の雨が降り出しました。
「雨だ、めぐみの雨だ。」
「久しぶりの大雨だ」
「神様が願いを聞き届けてくださった。」
「神様ありがとうございます。」
みんなは口々に叫んで、『かろと石』を囲み、踊りはじめました。
庄屋さんも、みんなと一緒に踊り、神様に感謝しました。
それにしても、どうして『かろと石』を動かすと雨が降ったのでしょうか?
庄屋さんが後日調べてみたところ、こんなことが分かりました。
むかし、その地のお殿さまの怒りをかった家老がいて、罰として石室に閉じ込められたそうなのです。『かろと石』はその石室のフタだったのだそうです。
石室に閉じ込められたまま、家老は家族のことを思って、泣き続けたのだそうです。
雨水は、その家老の涙だったのかもしれません。
村人たちはその家老のお話を聞き、あわれに思ったのか『かろと石』を『かろうと石』と言いあらため、大切に祀ったということです。
(長野県の民話)
このお話が、「カロート」という言葉の発祥なのかもしれませんね。
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